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2010.02.08

サイエンスカフェ岡山

Cafe

19年前、TBSの宇宙プロジェクトで日本人初の宇宙飛行士となった秋山豊寛さん。
今、野口さんがいる国際宇宙ステーションができるよりもっと前の話。
ソ連のミールというステーションに滞在して帰還するまでの様子はもうおぼろげな記憶ですが宇宙からの中継をワクワクしながら見ていました。

宇宙飛行士の訓練をソ連(現在のロシア)で受けるにあたって必ず2人必要ということで一緒に訓練していたのが菊池涼子さん。

最終的に宇宙へ行くことになったのは秋山さんのほうで、宇宙からの中継は当時見ていたけど宇宙への興味・関心も今に比べればそれほど熱心じゃなかったので記憶もあいまい。だからバックアップ要員として訓練されていた菊池さんのことも知りませんでした。

アメリカにおけるNASAでの宇宙開発の状況は見ることが多いけど、あまり知られていないロシアの宇宙事情についてのお話が菊池さんから直接聞けるということでサイエンスカフェに参加してきました。

☆ロシアの訓練施設、通称「星の街」。
基本的に一般人は入れない場所で、宇宙飛行士や関係者と家族が暮らしてる。
国家機密に関わるので、地図には載ってない。
今となってはどこにあるのか誰でも知ってる。でも載せない。


☆当時のTBSの訓練映像
激しく椅子に座ってグルグル回されたり、空から飛び降りたり、寒い森の中でのサバイバル訓練。
降下訓練は2度自殺したようなものでもうやりたくない!
単独で低空から飛び降りるので本気で怖かったらしい。


☆ロシア語は文法が難しくかなり苦労した。
動詞や形容詞だけでなく人名の語尾も変わるなんて!
講義はすべてロシア語なので辞書を引きながら。
専門用語は意外と発音が英語と似ている。


☆TBS社内の募集告知で200人応募。
当時は選抜の条件がめちゃくちゃ厳しかったので
候補が菊池さん一人しか残らず、慌ててハードルを下げてもらうようロシアにお願いしたらしい。
条件はいろいろあったそうですが、「裸眼で視力1.5以上」だけでも書類選考で大量に落とされたらしい…


☆ソ連側が秋山さんを選んだという体裁にはなっているが、実はTBS側で秘密裏に宇宙へ行くのは秋山さんだと決めていて正式発表までは上層部と秋山さん、菊池さんにしか知らされていなかった。
知っているのに笑顔で知らないふりをしていた2ヶ月間はほんとうにつらかったんだって…
でも星の街には自分たちと同じように他国から訓練に来ている人たちがいて2人のうち1人は乗れないというのは皆同じなので同じ境遇の人が傍にいて話をすることができた。


☆宇宙プロジェクトのもともとのきっかけはお酒にめっぽう強い当時のTBSのソ連支局長。
「オレの酒が飲めないのか」的気質がソ連の人と馬が合ったらしく、お酒の席でぽろっと「ロケット乗ってみないか」という話が出てそのまま実現しちゃったらしい。


☆TBSも当時のお金で20億以上ソ連に支払っているけど、
打ち上げ~帰還の全てを中継するための経費も同じくらいかかったとのこと。
20年も前の社会主義国ですから(KGBもいるしね)、無事だったとはいえちょっと怖い思いをすることも。
星の街での座学の最中に訓練の発砲音が響き渡ったとか。

秋山さんが帰還するカプセルの落下地点への交通手段がないので軍用ヘリに乗せてもらって激しく揺られたとか、落下地点情報を知りたいのでソ連にかけあって軍用無線の周波数を教えてもらったものの、軍事機密を知って俺たち生きて帰れるのかな…とスタッフさんたちが冗談でなく心配していたとか。

極寒の地では中継用のバッテリーが役に立たないので、寒さに強いバッテリーをフランス軍から調達したとか、
訓練をした秋山さんや菊池さんだけでなく当時のTBS関係者みんなの涙ぐましい努力があったんですね。
当時の資料を今から探そうにもなかなか大変なのですが、
当時の公式記録写真集を見せていただきました。(後述)


☆スペースシャトルとソユーズの違い。
ソユーズはとにかく超コンパクト。
3人を無事運ぶための最低限しかない。シンプルゆえに事故は1度もない!
ロケットも細いし、1キロと結構近くで打ち上げが見られる。
ものすごい音と振動。
取材で訪れたユーミンが別のロケットの打ち上げを見て泣き崩れたほど。


☆科学センタースタッフ様より情報。
倉敷市図書館に20年前の宇宙プロジェクトのビデオテープがあるらしい!
映像はずいぶん劣化しているけど、なんとか見られるから今のうちにぜひ!


☆宇宙服はオーダーメイド!
後で2着ともTBSがもらえる、という契約書を交わしたのにもかかわらず勝手に反故にされてササビーズに出品されちゃった。
秋山さんの宇宙服はTBSと富山県が争って富山県が2000万円で落札。
入札中は互いのことがわからないので、もし知っていればもっと安く落とせたのに…
菊池さんの宇宙服は海外の資産家の方が落札したのですが手袋だけはなんとかご自分で20万円で落札。ご自宅に飾っているそうで、あまり大きいものは置けないのでこれで満足しているとのこと。

現在のロシアでもやってますがお金さえあれば宇宙へ行くことは可能なんですよね。
シルクドソレイユの創設者も30億ポンと払って去年ソユーズに乗ってISSへ滞在してましたし。
一昨年のサイエンスカフェで金持ちになったつもりでかなり本気で宇宙旅行への行き方をいろいろ聞いたのですが、
昔より宇宙へ行くための条件がゆるくなっているとはいうもののやはり宇宙へ行くうえでの最大のネックはロシア語だねぇ…
スペースシャトルで宇宙に行く人だって緊急脱出時はソユーズを使うのでロシア語は最低限知ってるだろうし
危険が迫ったときにロシア語がわからなくちゃ死んじゃうのは自分だし。(←なにを本気で考えているんだか)

NHKロシア語講座でも見てみようかなぁ…

最後に写真をいくつか。

現在では入手困難な宇宙プロジェクトの全記録を載せた写真集を菊池さんが持ってこられていたのでみんなで回し読み。この内容が面白かったのでいくつか写真におさめました。

Book1

訓練中の菊池さん。
想定場所から外れて森の中に帰還のカプセルが落下したときに救援が来るまで生き延びるという想定のサバイバル訓練。

Book2


秋山さんの乗ったソユーズ打ち上げを見守る菊池さん。
実はこのとき盲腸の手術直後で半分抜糸の状態で無理して来てるので、打ち上げの振動が傷に響いて大変だったとのこと。

Book3


そしてこちらが宇宙に行った秋山さん。
日本の宇宙飛行士は毛利さんも宇宙へ行く準備をしていたもののチャレンジャー号の事故などで計画が遅れ、結果的に秋山さんが日本人初になっちゃったのだそうです。
宇宙に行ったジャーナリストとしては世界初。
そして「宇宙飛行士がサラリーマンなんてやってられるか!」と言って後にTBSを退職されたのだとか。

Book4

この時計は、菊池さんがロシア人宇宙飛行士にプレゼントしたものと同型で、お値段の割には性能がよく、5つもスケジュールのアラームがセットできるところが時間に追われる宇宙飛行士に大変重宝されたとのこと。
菊池さんが後にその方にお会いするときに在庫として持っていたこの時計を持参したところ、当時渡したものをまだ使っていた!
ロシアの方は、いい!と思ったものをいつまでも大事に使い続けて大きな変化を好まない傾向があるそうで、訓練なども今もあまり大きく変わっていないみたい。
宇宙飛行士も使ってるカシオの時計!と大々的にアピールしたいところだけどスポンサー等の関係でそれはできないんだって。

Watch


ソユーズ打ち上げの瞬間。
たくさん荷物が積めるスペースシャトルと違ってかなり細いです。
いろいろ字が書いてあるんですが…

Rocket1


当時のスポンサー名とTBSのロゴ!
こんなことやってたんだー。

Rocket2

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コメント

さっきスカパーのTBSチャンネルでこのニュースやってたよ。
思わずぺぱぐりちゃんが居るか探してしまった(笑)

秋山さんの乗ったミールは上空を通るところを観たよ。
打ち上げのときもTVをがっつり観てたし。
懐かしいなぁ。

投稿: 仮夢 | 2010.02.11 14:20

>仮夢さま
えぇぇぇ!地元でしか流れないとたかをくくっていたのに。CS怖い!
カメラは私のすぐ横にいたので逆に私は映っていないかも…
図書館で当時のビデオを予約したので楽しみなんですよ〜

投稿: ぺぱぐり | 2010.02.11 21:08

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